なぜ人は大事な決断を後回しにするのか?心理学が明かす「不確実性の罠」

なぜ人は大事な決断を後回しにするのか?心理学が明かす「不確実性の罠」
こんにちは!関達也です。
成功するためには、やるべきことを正しく見極め、それを優先順位に従って実行することが大切です。
しかし、多くの人はこの優先順位付けに苦労しています。何が重要なのか判断できず、結果として重要度の低いことを優先してしまう不合理な決定を下してしまうのです。
では、なぜ人は適切な判断ができなくなるのでしょうか?
この疑問について、心理学者のエイモス・トバースキーとエルダー・シェイファーが行った実験によって、不確実性が意思決定にどのような影響を与えるかが明らかになりました。
不確実な状況では「決断を先延ばし」にしてしまう

心理学者エイモス・トバースキーとエルダー・シェイファーは、「不確実な要素があると、人は決断を先延ばしにする」ことを証明しました。
【実験内容】
クリスマス休暇の2〜3週間前、大学生たちは希望職種に就くために重要な期末試験を受けました。その試験結果が出る2日前、彼らにはハワイ旅行を格安で申し込めるチャンスが与えられました。
選択肢は次の3つです。
- 今すぐ申し込む
- 今日は見合わせる
- 試験の結果がわかってから決められるよう5ドルの手付金を払う
このとき、学生たちはどの選択肢を選んだでしょうか?
トバースキーとシェイファーは、学生を2つのグループに分け、以下のような状況を作りました。
- 1つ目のグループ:試験結果がまだわからない(不確実な状態)
- 2つ目のグループ:試験結果をその場で伝えた(不確実性を取り除いた状態)
【実験結果】
1つ目のグループ(試験結果が不明な状態)では、61%の学生が「試験の結果がわかってから決める(選択肢3)」を選択しました。
一方、2つ目のグループ(試験結果がわかった状態)では、合格した学生の57%、不合格だった学生の54%が「今すぐ申し込む(選択肢1)」を選択しました。
試験結果が判明した後では、合否に関係なく多くの学生がすぐに旅行を申し込んでいます。
つまり、結果的に旅行を申し込むのなら、最初から決めても問題なかったはずなのに、不確実な状況にあると人は「判断を保留する」という選択をしてしまうのです。
選択肢が増えると「優先順位を決められなくなる」

トバースキーの研究仲間であるエルダー・シェイファーとドナルド・レーデルマイヤーは、別の実験で「選択肢の増加が意思決定に与える影響」について調査しました。
【実験内容】
ある日の夕方、大学生に以下の2つの選択肢を与えました。
- 尊敬する作家の講演会に行く(今夜限りの講演)
- 図書館に行って勉強する
この場合、21%の学生が勉強を選択しました。
次に、選択肢を1つ増やし、以下の3つにしました。
- 講演会に行く
- 図書館に行って勉強する
- ずっと観たかった外国映画を観る
すると、勉強を選択した学生の割合が40%に増加したのです。
通常なら「魅力的な選択肢が増えたら、より良い選択をするはず」と思われがちですが、実際には逆の結果となりました。
選択肢が増えたことで優先順位の決定が複雑になり、「判断停止」に陥った学生が増えたのです。
実験から学べる2つの教訓

この2つの実験から、優先順位を決める際に意識すべきポイントが見えてきます。
1. 不確実性があると判断を先延ばししやすい
何かを決断するとき、「結果がわからないから、もう少し待とう」と考えてしまうことがよくあります。
しかし、実際には「待つ必要のない決断」も多いのです。
不確実性があるからといって判断を遅らせるのではなく、「本当に待つべき決断か?」を冷静に考えることが重要です。
2. 選択肢を増やしすぎない
選択肢が増えると、決断が難しくなります。
仕事や日常生活でも、「選択肢を増やしすぎず、シンプルにする」ことを意識すると、優先順位を決めやすくなります。
例えば、やるべきタスクが複数あるときは、
- 「本当に重要なものは何か?」
- 「選択肢を減らせないか?」
を意識して整理するだけで、決断しやすくなります。
参考文献:ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』
この記事で紹介した実験は、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンの著書『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』に詳しく書かれています。
この本では、人間がどのように意思決定を行い、なぜ合理的でない選択をしてしまうのかが豊富な研究をもとに解説されています。
より深く学びたい方は、ぜひチェックしてみてください。
決断をスムーズにするために

人は不確実性に直面すると「判断を保留する」傾向があり、選択肢が増えると「決断そのものを避ける」ことがあります。
しかし、実際には「待つ必要のない決断」や「選択肢を減らすことで簡単に決められること」が多いのです。
あなたが今迷っている決断は、本当に先延ばしにするべきものでしょうか?
それとも、すぐに決めてしまっても問題のないことでしょうか?
ぜひ、今回の記事内容を日常の意思決定に活かしてみてくださいね。
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