人間は万物の尺度である〜相対主義のソフィスト「プロタゴラス」
価値観は人それぞれだという相対主義
紀元前、人類は農耕をきっかけに村から町へ、町から都市へと発展させ、巨大都市である国家(ポリス)を創り上げた。
国家同士が交流し合う中で、人類は何かが違うと感じてきた。 それは、自分たち国家で伝えられてきた神話や真理、価値観だ。
そしてギリシア人は、「万物の根源」という自然界において絶対的なものを探し求めていた。
そんな時、「人間は万物の尺度だ」という相対主義を唱えた哲学者が現れた。 プロタゴラス(紀元前485年頃〜紀元前410年頃)だ。
プロタゴラスは、トラキア地方にある古代ギリシアの都市アブデラで生まれたといわれる。
人間は万物の尺度である〜プロタゴラス
例えばコップの中に水が半分入っていたとする。 ある者は「水が半分しかない」と言い、ある者は「水が半分もある」と言う。
どちらも真実である。
「人や国家はそれぞれであり、正しいというものは人や場所や時代によって変わる。絶対的な真理というものはない」という考えが相対主義である。
相対主義は、最強の議論のテクニックを必要とされた
当時、古代ギリシャは民主主義国家だったため、政治家たちは有利になるためには議論で勝つ必要があった。
どんな議論にも2つの面がある。 それぞれの提案者が持つ信念は主観的で相対的なものだというのが、プロタゴラスの考えだ。 勝利するためには論証の価値ではなく、説得力が大事であるということだ。
ある人間には真理と思えることも、別の人間には虚偽だと思われる。 相対主義は善悪の道徳的価値にも適用できる考え方である。
すでに今から2,500年前に、「価値観は人それぞれだ」という相対主義が広まりはじめていたということは衝撃だ。
ソフィスト(知恵のある者・弁論家・教育家)は儲かる職業であった
プロタゴラスは、のちにソフィスト(知恵のある者・弁論家・教育家)としても知られるようになる。各地を旅したソフィストの中でも影響力を持ったひとりとなる。
ソフィストは、金銭を受け取って徳を教える職業であった。今の時代に生まれたら、迷うことなく弁護士になるだろう。
政治家や名家、富裕層の子供たちなどが民衆の前で雄弁に話せるようになるために、有名なソフィストのもとへ駆け込んでいた。 特に有名だったプロタゴラスは、とても儲かったそうだ。
しかし、ソフィストは金銭と引き換えに徳を教えていたため評判は悪かった。相手を打ち負かすための詭弁法を教えているという噂が、大衆の反発を買ったのである。
なぜ彼らソフィストは、ごまかしの議論の詭弁に走ったのだろう?それは、「自然界の法則」と「人間が作るルール」は相容れないことをソフィストたちは知っていたからである。人間が作るルールには絶対的なものはない、だから絶対的なルールではなく相対的なルールを勧めた。弁論術で、相手を説得するわけだ。
知ることを妨げるものは数多くあるが、そのなかには事柄の不明瞭さや人生の短さも含まれる〜プロタゴラス
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