フェイクニュースはなぜ止まらない?拡散の仕組みとネット規制の未来

フェイクニュースはなぜ止まらない?拡散の仕組みとネット規制の未来
こんにちは!関達也です。
前回の記事では、「テレビとネットの倫理観の違い」に注目し、不祥事でテレビから消えた人たちが、なぜネットでは逆に人気者として復活するのかを掘り下げました。
「炎上した人はなぜ消えない?─テレビとネットの矛盾する倫理観」についてはこちらの記事に書きました。

テレビはルール社会の象徴で、「正しさ」を最優視します。
でも、ネットはストーリー社会で、「共感」や「物語」があれば支持される。だからこそ、「炎上=終わり」じゃなくて、「炎上=始まり」になる時代になっているんですよね。
そして今回のテーマは、そのネット社会のもう一つの大きな課題である「フェイクニュースがなぜ止まらないのか?」についてです。
僕自身、ネットを使って情報発信しながらも、「これはさすがに危ないな……」と感じる場面が増えました。特にカオスメディアやSNSでは、誰でも簡単にデマを拡散できてしまう。
なぜ、こんな社会になってしまったのか? 今回はその構造と、これからどうなるのかを一緒に考えていきたいと思います。
なぜ人はフェイクニュースを信じてしまうのか?

フェイクニュースが拡散する理由には、人間の本能的な心理が関係しています。
1. 驚きと怒りが拡散の燃料になる
「えっ!?」「マジかよ!」と思わせるような情報ほど、シェアされやすいんです。人は自分が驚いたことを、誰かにも伝えたくなるものなんですよね。
2. 共感できるストーリーに引き込まれる
論理的に正しいかどうかより、「なんかその気持ちわかる!」と思える話のほうが、信じたくなる。これはストーリー社会の特徴でもあります。
3. 自分にとって都合のいい情報だけを選ぶ
人は、自分の考えや立場を肯定してくれる情報に安心する傾向があります。だから、反対の意見やデータを見ようとしない。「自分が信じたいものを信じる」時代なんです。
フェイクニュースが止まらない構造とは?

個人の心理だけでなく、ネットの仕組みそのものがフェイクの拡散を後押ししています。
アルゴリズムが感情的なコンテンツを優遇する
YouTube、X、TikTokなどのSNSは、「いいね」や「シェア」が多い投稿を優先表示する仕組みです。だから、感情を動かす投稿、特に怒りや不安を煽るような情報が伸びやすいんです。
事実確認の手間が拡散スピードに追いつかない
フェイクニュースは即拡散されるのに対して、ファクトチェックには時間がかかる。しかも、訂正が出てもほとんどの人は見ない。「ウソの方が早く広まる」というジレンマですね。
プラットフォーム側の本音は数字優先
SNSや動画サイトは、ユーザーの滞在時間やエンゲージメントが収益につながる構造。だから、事実かどうかより「バズるかどうか」が最優先になってしまう。フェイクが止まらないのも当然なんです。
フェイクが蔓延することで社会はどうなるか?

このまま放っておいたらどうなるのか? 僕が特に危惧しているのは、社会全体が「何を信じていいか分からなくなる」状態です。
1. 情報の信頼性が壊れる
何を見ても「それって本当?」と疑うようになる。信頼できる情報がなくなると、人は不安と混乱に陥ります。
2. 社会の分断が加速する
違う世界観を信じる人たちが、それぞれのフェイク情報に引っ張られ、まったく話が通じなくなる。アメリカのQアノンや陰謀論のように、「現実が分裂する」状態が起きかねません。
3. 権威や専門性が崩壊する
医者が言っても信じない。専門家よりもインフルエンサーの方が影響力を持つ。こんな状況では、社会の制度そのものが揺らいでしまいます。
最近話題になったフェイクニュースの事例

ここで、最近実際に拡散されたフェイクニュースをいくつか紹介します。
ネット空間の「信じたくなる嘘」が、どれだけリアルに社会へ影響しているかが分かります。
1. 能登半島地震をめぐる陰謀論(2024年)
2024年の能登半島地震では、「火災は人工的に起こされた」「電磁波兵器が使われた」といった科学的根拠のない情報がX(旧Twitter)を中心に拡散されました。
多くの投稿がリツイートされ、SNS上で一定の共感を集めましたが、実際には事実ではないことが判明しています。
一部では「こうした情報が救援活動への不安や混乱を招いた」と指摘されています。
2. 米大統領選をめぐる偽映像(2024年)
2024年の米大統領選では、AIによって作られた候補者の偽映像(不適切発言や行動を装ったもの)が複数出回りました。
ファクトチェックの前にSNSで拡散され、候補者の印象や支持動向に影響を与える可能性があると報道されています。
こうした「本物に見える嘘」が選挙の公正性を揺るがしかねないと、米国内外で懸念されています。
3. ワクチン陰謀論の再燃
「ワクチンにはマイクロチップが埋め込まれている」「接種者は数年以内に死亡する」といった根拠のない陰謀論が、2023年末から2024年にかけてSNSで再び拡散されました。
これらは科学的に否定されており、各国の医療機関や政府も注意喚起を行っていますが、SNSでは依然として強い影響力を持ち続けています。
これらの事例を見ると、フェイクニュースは単なる“間違った情報”ではなく、人の心理に巧妙につけ込んだ“拡散されるためのストーリー”になっていると分かります。
各国のネット規制の動き

この問題に対して、すでにいくつかの国では「規制」に動いています。
ヨーロッパ(EU)
デジタルサービス法(DSA)で、プラットフォームに対してフェイクニュースの削除や説明責任を課す動きが進んでいます。
アメリカ
政治的発言の自由が強いため、規制はやや消極的ですが、プラットフォーム側が自主的に誤情報を警告表示するなどの対応を強化中。
中国
国家による強力な情報統制。フェイク以前に、政権批判すら許されない環境。
日本
明確な法規制はまだ弱い。ただし総務省やプラットフォーム各社が、自主的なガイドライン策定に動いています。
ネットの未来は「ホワイト化」か「カオス化」か?

これからネット社会はどこに向かうのか?
僕は次の3つのシナリオがあると思っています。
1. ホワイト化する(規制が進む)
- フェイク対策として、AIによる自動削除や、投稿制限が強まる
- 結果、安心できるけど退屈なネット空間になる可能性も
2. カオス化する(完全に無秩序)
- フェイクがさらに拡大し、「何が真実か分からない」社会になる
- 結果、人々は分断され、社会不信が広がる
3. パラレル化する(分裂して共存)
- ホワイトなエリアと、カオスなエリアがネット内で共存する
- 自分の価値観に合った情報空間を選ぶ時代になる
現実的には、3番目の「パラレル化」が一番ありそうです。
事実を重視する人は「ホワイト情報ゾーン」に、刺激や共感を求める人は「カオス情報ゾーン」に住む。それぞれの現実が並行して存在するようになるかもしれません。
これからの時代に必要なのは「情報を見抜く力」
フェイクニュースが止まらないのは、個人の問題ではなく、社会構造とテクノロジーが生んだ必然です。
だからこそ、僕らが身につけるべきなのは「すぐ信じない」「自分で調べる」「情報の出どころを見る」といった「情報を見抜く力」なんです。
さて、次回は「分断は避けられない─情報格差が経済格差より深刻になる未来」について深掘りしていきます。
「分断は避けられない─情報格差が経済格差より深刻になる未来」についてはこちらの記事に書きました。

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